第七〇稿(過去バイ、あるいはできるだけ大きな容れ物を) - スポンサー広告クロニクル
FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

第七〇稿(過去バイ、あるいはできるだけ大きな容れ物を)

ルマン1000は事故で廃車に。左折巻き込み、早朝の都内で確か今頃の季節だった。スピードは出てなかったけれど、ノーブレーキで突っ込んだ。いざと言う時に何もできない、体が動かない、の良い証左だろう。フルフェイスのシールドの文字通り目の前をアスファルトが滑っていくのが見える。いや、滑っているのは私の顔面の方だ。ジェットヘルなら顎を直撃したんじゃないだろうか。
本人の方は大したことなかったけれど、車体はそれなりに損傷した。外車でパーツ代が高いこともあり修理代が天井知らずだったために廃車にしてしまったけれど、今思えば直す手もあったのかなと思わなくもない。とは言え、人生の流れ的にそれがなかった。薄情とも思うし、力のなさ、とも思う。ものを持ってちゃんと維持するにはエネルギーが要る。情やらお金やら時間やらのエネルギーだ。それをかければかけるだけ喜びと煩悩に囚われるのだし、それだから、全部捨ててしまえと上人様は言う。でもそう言われるということはそれが難しいからだ。ここにも狂おしい二項対立が在る。

だから煩悩を断つために捨ててしまうのだ、なんて格好のいいことではまったくなかったのだけど、当時は自分で直すという発想もなく、またあったとしてもパーツの選択などでは苦労したことと思う。社外を入れるにしても選択肢は少なくかつ高価だ。懸案だったスタイルの中途半端さも合わせて変更しようと思えば尚更。それであっさりと乗り換えてしまった。

思うのは、自分は薄情者だ、ということだ。とは言え、例えば一処に住みつづけひとつのものだけを愛し、一所懸命を体現するような生き方をちっともできない以上、仕方あるまいとも思う。とまれ、あれだけ

 四発なんてどれも同じ、やっぱり二気筒を一から組んだ方が凄いぜ!

などとFREEDOM(日清カップヌードル)のタケルよろしく息巻いて、グッチじゃなければドゥカティか、BMならばRの4バルブ、いややっぱり2バルブか、国産ならうーん、ファイヤーストームはホンダで優等生すぎるし、TRXはヤマハでお洒落すぎるし、うーんTL?TL1000R?なんて通ぶったことを言っていたくせに

CIMG0579.jpg

K1。しれっと四気筒。

この時確か2000年を数年過ぎた頃であったので当然すでに10年以上落ちの中古だったけれど、この近未来的存在感は半端なかった。私がディーラーでアルバイトなぞしていた頃すでにK・Rともに1100の時代で、さらにその後すぐに1200、Kが初の横置きになったり100馬力超えたりしていたけれど、こいつの存在感だけはまだ現役バリバリだったと思う。他に比べるものもちょっとない。

CIMG0608.jpg

とにかく(横から見て)バカでかい、色と柄が派手、当時の住まいの住宅街の狭い路地をうねうねとしていた時、小学生くらいの男児が目をこれでもかと見開いて

 「うおおおおかっけーっ!」

とマジで唸ってたのを思い出す。近くでコイツが低い排気音たててぐりぐりとやってきたら、それはロボコップみたいなものに見えるのだと思う。かっこよさ的には超合金好きの子供キラー。それでもコードナンバー1を背負ったBMの気合モデル。すでに過去の遺産となっていたのも良かった。よく犯人の車とか何色と目撃者が同定できるのに対してバイクは小さくて色がなんだかわからない!という社会的に重要な問題がありますが、これは確実にわかってしまう。決して悪いことはできない。

CIMG0609.jpg

ミーハーだとも思うし若気の至りとも。ただしすでに三十にして而立、は過ぎていたから、若気でもなくむしろ偉ぶりたかったのかも知れない。いや、単に変なのに乗りたかっただけかも。

本当のことを言えば、当時憧れの年上のひとに「孔雀のようにアピール」したかった、と言えばあながち嘘ではないかも知れない。もうその時点で硬派なライダーなんぞではからきしないのだけど、それでも本人は真面目であったし、軽薄であったわけでもない(と信じたい)。いつでも群れもせず、淡々と走り、憧れのひとは確かにリアシートに優しく収まってくれ、少しは遠くに出かけたりもした。世を憚らねばならぬ関係だったから、できるだけ大きな容れ物が欲しかったのだ。"夜霧"みたいなものかしら。そういえばこの子には名前をつけてなかったから、今更そう名づけようか。
思えばうっすらと幸せな時代だったけれど、K1自体はあまり距離を伸ばすことはなかった。
そしてその後バイクは降りてしまう。
関連記事

Comments - 0

Leave a reply

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。