第4991ルペン(あるいはメロンションと大島渚)
ところで世の中を見れば、左翼党のメロンションが実は大島渚の影武者(生まれ変わり)である、ということに気づく人はあまりいないようで、もっぱらルペン女史と若きマクロンの対決に話題は集中していたようだ。とりわけマクロンはその若さと美貌で、またそれに加え大幅に年上の妻がいるというゴシップ的要素を加え、私も一次投票当初から勝つのは彼だろうと思っていた。同時に、極右と名指しで学識界だけでなく政財界からも総攻撃を喰らっていたマリーヌを見るにつけ、天邪鬼かつ判官びいきの私は(加えて熟女好きの私は)むしろそれ行け!とばかりの気持ちになっていたことを「自白」せねばならない。
なぜ白状せねばならないのか。それは国民戦線の支持者はレイシストのレッテルを貼られているからだ。オヤジ殿が筋金入りの右翼の大将でそれが起源なのだから、当たり前と言えば当たり前だが、実際には娘のマリーヌはそれを追っ払いイメージ向上に努め、政策レベルでも必ずしも極右とは言い難い。にも関わらず、(原理主義の)イスラムを敵視し(「不法」の)移民を排斥し、という部分は良くも悪くもブレないのだから、一般に「良識」のある人々から拒絶反応を受けるのは致し方ない。手元に彼女の二次投票用のブローシャーがあるが、その部分を読めばやはり私も眉をひそめてしまう。
実は、本来は、そんなに異民族・異文化が嫌なら自分たちだけでやってみせろ、位の捨て台詞的反発心(+判官びいき、+下衆な野次馬根性など)からルペンに着目していた。そもそも、純フランス人なんて言う概念が気に喰わないし、どこで切り分けると言うのか。できるんならやってみれば?といった感じだ。学校へ長々と通い、ある程度世界をまわってきた私のような人間の多くは、枝葉の違いはあるとは言え大概は左派になるもので、その意味でもルペンを嫌いこそすれ応援するような筋合はない。そもそもこの私自身が異民族だ。だから、初の女性大統領になるかもしれないということ以外に価値はない、位の反応をするのが普通だろう。
でも、私は自分自身の感覚として知ってしまった。弱い人間は、「よそ者」が怖いのだ。理解しろ、と言うのは容易いが、その能力があるかどうかはまた別の話なのだ。アンチ・レイシズムと言えば聞こえは良いが、実際には多くの人達はハードコアの人種差別者と言う訳ではない。コチコチのレイシストなんて本当はどこにもいない。ただ、「自分たち」と異なる人々、異なる文化・宗教、とりわけ言語が通じぬという事実によって、自他を区別しないわけにはいかず、そしてそこにストレスがかかれば嫌いにもなっていく。例えばもし仮に即席のプチ・レイシストを作りたい等と思うなら(作りたい理由はわからぬが)、誰であれ混雑する移民局の受付でもやらせれば簡単にできあがるだろう。全てを受け入れる訳には無論行かず、よって書類は煩雑を極め、それに対応できぬ人々はいつでも大挙して押し寄せ、時に口汚くののしってくる。文句を言いたい気持ちはわかるけれど、言われ続ける側も辛かろう。
だから、最終的には私の態度はこの短い大統領選のキャンペーン中の間だけでも変化していった。(恐らく無知と経験の不足によって)よそ者がなんとなく怖い人達(つまり実は私達全員だ)の気持ちを考えずにはいつまでも解はないだろうと思う。
キーワード:フランス大統領選2017、国民戦線、ルペン、極右、レイシズム、朝までナメてれば。
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